向井千秋さんや毛利衛さんが宇宙から地球を見せてくれたこともあって、地球がとても身近なものになってきて、僕たちの生活や仕事の中でも地球環境保護という考えがとても一般的になっています。革のなめし技術でも、環境保護という点から天然素材の植物性タンニンを使った「フル・ベジタブル」などと呼ばれるタンニンなめしが、今注目を集めています。
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革のなめしには大別して3つの方法があります。前述した「タンニンなめし」「クロムなめし」、そして両方を使った「コンビネーション」です。古来から行われてきた「タンニンなめし」に対して、「クロムなめし」は100年ほど前にドイツで開発された技術です。もともとは軍事用に開発された技術でクロム鉱石を利用してなめすので、「タンニンなめし」よりも手に入りやすいし、安価に大量に生産できるというので、世界に広がりました。そしてクロムでなめされた革はタンニンなめしの革と比べて、いくつもの長所があることがわかりました。
火に強い、 変色が少なく発色がいい、 弾力性があるので靴などに適するし、硬い革も柔らかい革もできる。 |
このような長所を生かして、柔らかい上質の革はナッパカーフと呼ばれるコートなどの衣料用に使われるし、安全靴のような実用一辺倒の丈夫な革もできます。ドイツボックスと呼ばれる革もクロムなめしで作られているし、靴を作る時は底には「タンニンなめし」の革があっているけれど甲の部分はほとんどクロムなめしの革を使っています。そして今や世界で生産される革のほとんどは「クロムなめし」で作られるようになりました。
「タンニンなめし」のナチュラルも捨てがたいし、「クロムなめし」の汎用性も素晴らしいものです。革の特徴を生かしながらデザインしていくことが、今一番生産者に求められているのだろうと思います。 |